刹那に輝く物語

午後から事業セミナーがあって、街に出た。
テーマは販促ツールで、前半は主にチラシと名刺の紙媒体のお話。
ちょうどこれから新しいチラシ作成を考えていて、経験を積んだ講師の方の講義は、とても参考になった。
この人が提示した事例にならって、名刺も新しく作ってみようかと思い始めている。

後半は独立したばかりの、若いYouTuberの講義。
商売ツールとしてのYouTube作成に、特化した1時間だ。

明日で31歳になるという彼は、開口一番「僕のこと知ってる人?」と挙手を求める。
参加者15名、一人として手が上がらず、最初からドン引き状態に。可哀想かわいそう
ここ静岡では名前が知られているって自信、あったんだろうな。受講者の大半は20代〜30代と、YouTubeに馴染んでいるはずの年代だし。

もと芸人という彼は、メジャーなYouTuberのもとで修行したことがあるそうだ。講義の中で作例が公開されたけれど、彼らの影響をもろに受けた、いかにもって作り。
僕の娘がよく見ていた”HIKAKIN”や”はじめしゃちょー”のテイストそのもので、それを企業バージョンに置き換えた発想が、今後当たるか否かだ。そんなに悪くない、と個人的には思ったけれど。

使う資機材や編集ソフトも、十分とは言えない個人の経験からすものだから底が浅い。そんな断言するもんじゃないだろうと、心中で舌打ちしたくなる。
これから事業の一環としてYouTubeを活用する人のため、垣根を低くしようというのはわかるんだけど、カメラも照明もマイクもいらないなんて断言するのは、いくらなんでもマズイでしょう。やってくうちに揃えましょうね、くらいにしとけば。

なんか批判めいた物言いに聞こえるかもしれないが、別に彼をくさそうっていうんじゃない。
僕なんかよりしっかり仕事とっているし、だからセミナー講師だって頼まれるんだろう。

たまたま(世代の近い)中年の講師と、若い彼に今日という同じ日に接し、明らかに感じる違いは自己主張の有無だ。
前者では、情報をどれだけ相手にしっかり伝達するか、内容が注意深く練られている。睡魔すいまがおそうはずの午後の2時間、聞くものを飽きさせない技術がある。ハマり役だ。
対する若きYouTuberは、与えられたミッションとご本人の指向性がチグハグなまま、役に馴染んでいない感を強くさせられた。

最も僕にとっては、”HIKAKIN”など今の流行はやりは過剰かじょうであって、何がそこまでウケるのか、よく理解できないでいる。

プロの役者が、しっかりした脚本を前提に演じる映画やドラマだからこそ、飽きずにみ続けられるし満足もいく。
それだけ感性が、今という時代に追いつけていないってことか。
でも、”HIKAKIN”の映像が残り続ける未来を、どうにも想像できないんだよなぁ。
100年後、小津安二郎の映画には変わらず一定のファンがいると思うんだけれど。

全盛のYouTuberじゃなくて、俺が目指すのは「秋刀魚さんまの味」だ!
などと、不遜ふそんにも決意を新たにした、59歳の秋でありました。 サンマ、食いたくなってきた。

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