明けの明星の一つの光

Yahooのニュースに、モロボシダンのフィギアが載っていた。

https://news.yahoo.co.jp/pickup/6410256

記事の内容にとりたてて感想はないけれど、ダンが主人公の『ウルトラセブン』となれば、何かと思い入れは深い。
円谷プロの空想特撮シリーズ第3弾であり、TBSによるウルトラシリーズ第4弾(第3弾は東映制作の『キャプテンウルトラ』、見落としがちだ)。

まず、オープニング「ウルトラセブンの歌(作曲・編曲:冬木透)」からして、すでに別格のひびきがある。
冒頭のコーラス「セブン、セブン、セブン、セブン」の3番手が尾崎紀世彦とは、よく知られた(知られてない?)逸話だ。
特筆すべきはオーケストラ・アレンジ。特にホルンは、もろマーラー交響曲1番「巨人」だ。あるいは、リヒャルト・シュトラウスのにおいだって濃厚である。
まだマーラー・ブームが起こる前の60年代、子供番組でこんな編曲を敢行かんこうした作曲者の慧眼けいがんには恐れ入る。

最終回に至っては、ダンがアンヌにウルトラセブンであると告白するシーンで、シューマンのピアノ協奏曲が流れ出す。
決意と運命さだめを引き受け、ダンが自らの思いを断ち切り告白するあの名シーン。放送された時代とる対象の制約から、具体的な表現は皆無であっても、究極のラブシーンと言えまいか。
その場面に添えられた、鋭い付点リズムのピアノ。
半世紀以上が過ぎたいま思い出しても、最初に聴いた衝撃がよみがえる。
っていうか、今だとYouTubeで普通にみれたりする。再生しようものなら、もうウルウルもんである。
この斬新ざんしんなカメラワーク、いまもって誰も凌駕りょうができないであろう、すさまじいインパクトだ。

戦後の記憶が、まだ鮮明に残っていた当時。とうと御霊みたまを祖国に捧げられた、特攻隊の方々へのオマージュに感じられたりもする。

しかもピアノは、33歳で夭逝ようせいの天才リパッティ。よくぞこの音源を選んだものだ。このシーンにこの演奏、すごすぎる。
冬木透がのちの音楽愛好家に与えた影響力は、『ウルトラセブン』1作に限っても計り知れないものがあるはずだ。

ヒロインのアンヌ(菱見百合子)がたまらない。名前からして、すでに悩ましい。
アンナじゃなくて、アンヌなのだ。語尾が「ヌ」であることで、音感上の淫靡いんびさに拍車はくしゃをかけていまいか。
さらなる追い打ちは、童顔にしてあのハスキーボイス。
かろうじて保たれている危うい均衡が、複雑な味わいのキャラクターを生んだのだろう。
当時5歳の男の子に恋愛感情など馴染まないが、この女性を、たとえば妖精のような無味無臭な存在とはとらえなかった。

生身の女が持つ色気と存在感を、むしろ現実のオンナ以上にブラウン管から発散させながら、同時にセックスとは直結しない稀有けうなキャラクターである。
そしてまだ幼児だった僕に、いかんとも形容しがたい、体の奥底のほのかなうずきを誘発させたのだ。

ご同輩でアンヌにぞっこんな方は、少なくない。YouTubeにも、彼女の登場シーンだけで1本作って公開している人がいる。
閲覧者も多く、思い入れたっぷりのコメントも読みごたえがある。気持ちは僕も、よくわかる。

本題に入る前に、1,400字を超えてしまった。オレ、書き出すとくどいからなぁ。また、明日の続きとする。

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