過去との会話
愛知から娘が帰省している。
学生時代の友人と会食する約束で、夕方、静岡駅まで送り届ける。
我が家から駅までは車で片道40分前後かかるため、宵越しのお迎えも頼まれている。
せっかく街まで出てきたことだし、久しぶりに書店を覗いていこう。
以前なら北口ロータリー向かいのビルに、3フロアもの規模を誇る「戸田書店」があったのだが、2020年7月に閉じてしまった。
残念だが仕方ない。僕からして本を買うのは、専らブックオフの100円コーナー。
新刊も、週刊や月刊誌も、購入しなくなって久しい。コストばかりでなく、今の小説や批評に興味がわかないためだ。
活字を追うなら、むしろ一昔前の著述のほうが好ましい。新しいものは却って、使いまわされた言い回しに古臭ささを感じてしまうのだ。
あさのあつことか原田マハとか、それなり好きな女流作家はいるけれど。
書物自体が廃れてきている今、そうであっても何がトレンドなんだろう。
新静岡セノバ5階に「MARUZEN&ジュンク堂書店」がある。
専門書の品揃えに定評のあるジュンク堂と140余年の歴史を持つ丸善がコラボ。書店の王道を目指します。
MARUZENといえば丸善雄松堂。
1号店開店が1870年(明治3年)という、老舗中の老舗である。スペースも地方の書店としてはとびぬけて広く、品ぞろえも豊富だ。
同行した妻は、縫物関係のコーナーに腰を落ち着け微動だにしない。
最初から買う気のない僕は、店内を散策する。
入口に近く、最も目を引くところには新刊・話題の本が平積みされている。
「夜が明ける(西加奈子)」「人は話し方が9割 1分で人を動かし、100%好かれる話し方のコツ(永松茂久)」「本当の自由を手に入れるお金の大学(両@リベ大学長)」「1%の努力(ひろゆき)」「うるわしの宵の月 3(やまもり三香 )」
全く知らない。西加奈子とひろゆきというお二人の、名前だけ聞いたことがある程度だ。
「人新世の「資本論」(斎藤 幸平)」
えっ、いまだに資本論なんて流行ってるの?
もっとも現静岡県知事は、20歳のころに『毛沢東選書』全巻を読破したと、胸を張って自慢していたっけ。はったりでも本当でも、かなりヤバい奴ってことじゃんね。
「行動経済学 (サクッとわかるビジネス教養 阿部誠)」「デジタル・ファシズム 日本の資産と主権が消える(堤未果)」
この辺はちょっと、興味あるかな。ブックオフまで降りてきたら買おうっと(ダメじゃん)。
文庫・新書・専門書、実用書に雑誌と、背表紙を一通り追いかける。
芸能関係なんて、けっこう種類あるんだなぁ。若い女性が立ち読みしている。思ってたより本の需要って、まだあるのか。
けっきょく読みたいものがない。カメラで録画するとき使う、ジンバルを特集した冊子が唯一か。
それだって2年くらい前の内容で、紹介されている価格帯も今は半分以下だし、性能もはるかに向上している。製品のサイクルに間に合っていないのだ。
やっぱり週明けは、古本漁りか図書館だな。わりとコストパフォーマンスのいい人生だ。
「チャーリング・クロス街84番地」。アンソニー・ホプキンス主演の本をめぐる物語。
ニューヨークで暮らす女流作家ヘレーヌの趣味は、珍しい書籍の収集。ある日、新聞広告でロンドンのチャーリング・クロス街にある古書店のことを知ったヘレーヌは、さっそく注文の手紙を出した。
すると探していた本と一緒に古書店の主人フランクから丁寧な返信が届き、これをきっかけに二人は文通を始めるようになる。
そして、互いに相手を訪ねることもなく20年が過ぎた頃、ヘレーヌはフランクの死を知らされる…。
めちゃくちゃ好きな映画なんだけど、無料だと観れる機会ないんだよなぁ。有料ならAmazon Prime Videoで。
本好きな方には、超お勧めです。最後、たぶん泣きます。