昔は良い!
音楽に詳しい目上のクライアントとお話ししているうち、いつしかアナログ時代の話題になりました。
この方が申されるには、「音楽はCDの台頭を持って終了した」のです。
人間の可聴域とされる20Hz〜20,000Hzでカットされた人為的操作が、音楽の大切な要素まで殺してしまっているというわけです。
「聴こえないようでも無理に音域をカットしなければ、感じられるものが人間には備わっているんです」
したがって音楽が聴きたければ、カートリッジが拾いアンプの増幅を経てスピーカーに再現される、レコードでなければならないのです。
私は全面的に、このご意見に賛成です。
ちなみにプレイヤーは、ダイレクトドライブよりベルトドライブの方が音が良い。
スピーカーはJBLやTANNOYより、ALTECや自作した12センチフルレンジが素晴らしい。
レコード針ならSTAXの表現力が最強、とかね。
お金がなくて粗大ゴミから拾ってきたCECレコードプレイヤーの、明らかにスピードが狂っているのに現れてくる響きの、なんと蠱惑的だったこと。
一度でもレコードの音色に触れたなら、デジタルとの圧倒的な表現力の差に、誰しも魅了されるはずと思いこんでおりました。
ところがこの方が仰るには、レコードを初めて聴いた若い人の反応は、「変な音」、なんだとか。
マジか。
いらないものは削るという合理性追求の末路が、とうとう人間の感性まで、大きく鈍磨させてしまったのでしょうか。
私など、安物であってもレコードプレーヤーを設置していますが、なかなか聴く意思が持てずにいます。
聴けば再び、泥濘へ足を踏み入れそうで怖いのです。
そのくらいの魔力が、レコードにはあるんです。
「若い人は気の毒だ」そう言って、この方は詠嘆されました。
私も100%、このご意見に賛成です。