日本、きれいだなぁ

ウルトラセブンの真骨頂しんこっちょうは第8話『狙われた街』にあると思う。もはや、子供番組のいきにはない。

そういえば同時期、手塚治虫原作のアニメ『どろろ』が放映されていたが、こちらも子供向けに作られたとは思えない。
白黒アニメであることも、逆に物語の迫真性を高めている。
同和問題、障害者差別、はえのたかる腐乱ふらん死体、幼い子供への集団リンチ等。テーマや描写の過激さもさりながら、差別用語・放送自主規制用語のオンパレードからか、地上波で再放送された記憶がない。
もったいないことだ。冬木透とは違い、後年こうねんには世界的知名度を誇った冨田勲とみたいさおの音楽など、当時の作品に賭ける本気度に圧倒される。

どろろの声を担当した松島みのりさんが、以前ラジオ番組で話されていた。当時の業界には、子供向け・大人向けの区分けなどなかったそうだ。
「いいものを作ろう、その一心でした」。
その第1話が、YouTubeで観られる。魔物と取引をする冒頭の醍醐だいごの描写からして、画面にくぎ付けになること請け合いだ。声優陣も豪華絢爛ごうかけんらん、たとえば醍醐の声は、納谷悟朗だもんなぁ。

話がだいぶ逸れた。でも、さらに脱線を続ける。
昨日、ウルトラセブンの最終回(第49話)を特攻隊の皆様のオマージュと解釈したが、それを言うなら『鉄腕アトム』最終回の自己犠牲など、そのものではないか。
アトムが危機に瀕した地球を救うために、太陽の活動を抑えるロケットを抱えて太陽に突っ込んでいくラストシーン。
「あ、地球だ。地球はきれいだなぁ」
さっき観て、もう号泣である。愛する地球(祖国)のため、自らの命を惜しげなく差し出す無償むしょうの行為を、「個人が優先」と教育される今の子供たちがみてどう感じるだろうか。昔も今も、受け止める思いは変わらないと信じたい。

『どろろ』における醍醐だいごという男は、立身出世のため我が子を48体の魔物に売り渡す、究極のエゴイストである。
その生贄いけにえとして、身体の48箇所が欠損したヒルコのような存在として生まれた百鬼丸は、魔物を倒すごと自らの身体を取り戻していく。
それはうばわれた人間性を一つずつ回復していく、希望と再生のドラマだ。

満身創痍まんしんそういのウルトラセブンが怪獣と対峙たいじするとき、自分の命を捨ててまで戦うダンの正体を知ったキリヤマ隊長は叫ぶ。
「行こう! 地球はわれわれ人類が、自らの手で守り抜かなければならないんだ!」
”地球”を”日本”に、”人類”を”日本人”に置きかえれば、いま僕たちが最も必要とする精神じゃないか。
他国を侵略し、生きたまま罪なき者の臓器を奪う史上最悪の大国が、残念ながら日本の隣にある。
2050年に我が国が「日本省」として組み込まれていることは、その軍部の公式な計画だ。

同盟国だからと、アメリカにばかり頼ってはいられない。いざとなれば、彼らは彼らの国益を最優先する。当たり前だ。
まして自らが立ち向かう姿勢も示さずして、他国が命がけで助けてなどくれるはずもない。

特定の方たちの自己犠牲に頼るのでなく、「侵攻してきたら、ただじゃおかないぞ」という覚悟と準備。
自主独立の態度を、国民誰もが持つべき時なんだ。すでに50年以上前の子供番組は、ちゃんと教えてくれていた。

第8話はまた明日。

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