青ケンのレクイエム

青田ケンイチと、新しいYouTubeチャンネルを立ち上げようと考えた。
彼いわく公開に際し、20本くらいの動画を、あらかじめ用意しておいた方がいいとの事。
そこで今後は、歌やコメントを撮り溜めしていこうとなった。

7月1日、この収録が最初になる。それから3週間も経たぬうち、彼は忽然とこの世からいなくなってしまった。
だから彼のオリジナル作品を撮ったのは、「ケムリ」と、この「熱病」だけになる。

青ケンは、白黒の映像が好きだった。
最初この動画も、白黒に変更して欲しいとせがまれる。でも、ちょっとしてから「このまま行きましょう」と、返事が来た。だから今回も、カラーのままアップする。

狭いスタジオで撮り続けるのは的に限界があるから、ちょっとだけでも外で撮影しないかと誘った。
明確な理由は言わず、「今日は止めときましょう」との返事。ま、雨もけっこう降ってたからな。

出来上がった映像を見せると、「夜の雨の公園なんか、いいっすよねぇ。もっとそういうイメージ、挿入したいっすよねぇ」。
おい、それオレが最初に撮ろうって言ったやつじゃん。勝手なヤロウだ。

正直、撮った時はいまいちピンとこない曲だった。
このあと彼のトークも収録したけど、特定の恋愛経験に捉われない別れのイメージを歌にしたものだ。

ところが今聴くと、「熱病」が彼の farewell Song に響いてならない。
取り返しのつかない時間、「過去」という名の非情を、今という変更の効かない「現実」そのままに映し出している。
僕たちを置き去りに、ひとり去ってしまった青ケン。
まるで自分のためのレクイエムを残すため、僕という共犯を必要としたかのようだ。

誓っていうが、このとき彼に忍び寄る死の影など、微塵も感じていなかった。
彼もそうであったと、断言できる。偶然がこの曲を、最後の公開とさせたまでだ。
でもそれこそが天の差配であったと、今となっては思えてならない。

彼を愛する人たちのツイッターは、大切な存在を失ったことへの喪失感に満ちている。
嘆き・悲嘆・友情・愛。いずれも彼が受け取るにふさわしいメッセージばかりだ。

彼よりだいぶ歳も多く、付き合いも浅い僕からすれば、世に問う機会を永遠に閉ざされてしまった才能をこそ、惜しむ。
生前、彼の作品はもっと多くの人に触れられるべきだったし、常人離れした声量は、かけがえのないものだった。

彼のラストステージにワンマンショーの形で浴した僕は、その一点に限れば、幸運だったのかもしれない。
そしてもう一つの気がかりについて、日を改めて綴りたい。

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